株式会社HOOPで企画した、第二回ラアトレ学生実施コンペの二次審査が終わった。
最優秀の案は、日本大学の大学院生で、女性2人のコンビであった。
このコンペは、マンションディベロッパーである株式会社ラアトレが保有する賃貸物件を、学生の社会勉強の為に提供し、学生からデザインを集め、最優秀の案を実際に作り出すイベントである。
募集を開始したのは、2015年4月のはじめ。
応募締切が、2015年6月22日であるから、2か月半学生には考える時間があったわけだが、実際は、授業もあるだろうし、サークルや部活、友人と遊ぶ時間もある。
応募した多くは、大学4年生~大学院2年であり、卒業設計や課題、修士論文などを抱える時期であることは間違いなく、その大きな労力に感謝と敬意を持っている。
このコンペを間近で見た感想は、学生のプレゼン能力がかなり高いという印象である。そして、コンペの趣旨をかなり理解している案が残ったように思える。
一次審査は、プレゼンボードA3を2枚で表現し、154案の中から7案が選出された。その時点で、かなり優秀な学生であることは間違いないが、二次審査で5分与えられ、「パワーポイント」と「言葉」、そして「模型」で説明をするのであるが、これが非常に分かりやすかった。
建築界の言語は昔から一般の人向けで無く、業界内部で通じる言葉が多かった。何か大きな特殊なサークルの様な感じで、中にいないと話が通じない。
逆に、このコンペの主催者は、マンションディベロッパーであり、いわゆる不動産屋である。ここでも言語は普通であるが、思考方法が独特(建築とは違う)で、色々な説明のあとに、「で?いくら儲かるの?」「何年で元がとれるの?」といった、お金が中心の世界があった。
不動産業界が、投資家で支えられたビジネスであり、建築界は、都市の在り方、豊かなライフスタイル、風景、最新技術から伝統的な技法等…さまざまな文化を背負っているという土壌の違いは大きく、近くて遠い世界と言えよう。
こうした中、学生は、建築業界でしか使わない様な言葉を使わず、豊かなライフスタイル、時間や季節による変化など案の魅力を語っていた。
最優秀の案も、不動産では、方位しか気にされない窓の魅力を語り、最優秀に輝いた。
このコンペの趣旨は、ラアトレという企業の社会貢献活動であるが、裏のテーマは、不動産業界に対して、お金以外の価値基準があるんだよ!って学ぶ機会を作ることだと思っている。
完全にお金の世界を知ってしまった設計者では出ない、価値を提供することが建築学生側の求められたことであり、知らないから出る、新しい魅力の創造を提案してもらったと思う。
HOOPの企画するコンペ(イベント)では、こうした、両者が「持っていないもの」を提供し合うことが一番大切なことと考えている。
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